2026.03.27
現場報告
おさかなだお長崎2.0(前編)
オンライン×リアルの接点が広がる—おさかなだお長崎の活動展開
2024年1月、地方創生の取組みとして、東急不動産ホールディングスが、長崎の魚食文化振興を目的としたローカルDAO「おさかなだお長崎」をスタートさせました。
当初想定した100名を上回る111名でスタートしたこのプロジェクトは、同年8月に長崎創生プロジェクト事業第84号に認定され、行政からも大きな期待を寄せられています。
前回紹介記事(2025.1.28)から1年経ちました。おさかなだお長崎は、地方創生DAO(Decentralized Autonomous Organization)ならではの紆余曲折を経ながらも、また新たな課題に取り組み、着実に進化を遂げてきました。その歩みは、従来の地方創生プロジェクトとは一線を画す、有機的で予測不可能な広がりを見せています。
本記事では、首都圏での発信活動、VTuberやメタバースを活用した新次元のコミュニティ形成、そして偶発的なつながりが生む価値創造について、プロジェクトを主導する東急不動産ホールディングス グループCXイノベーション推進部デジタル戦略グループ課長の岸野麻衣子さん、コミュニティマネージャーの九十九凜(つくも・りん)さんへの取材をもとに、おさかなだお長崎のこれまでとこれからについて紹介します。
当初想定した100名を上回る111名でスタートしたこのプロジェクトは、同年8月に長崎創生プロジェクト事業第84号に認定され、行政からも大きな期待を寄せられています。
前回紹介記事(2025.1.28)から1年経ちました。おさかなだお長崎は、地方創生DAO(Decentralized Autonomous Organization)ならではの紆余曲折を経ながらも、また新たな課題に取り組み、着実に進化を遂げてきました。その歩みは、従来の地方創生プロジェクトとは一線を画す、有機的で予測不可能な広がりを見せています。
本記事では、首都圏での発信活動、VTuberやメタバースを活用した新次元のコミュニティ形成、そして偶発的なつながりが生む価値創造について、プロジェクトを主導する東急不動産ホールディングス グループCXイノベーション推進部デジタル戦略グループ課長の岸野麻衣子さん、コミュニティマネージャーの九十九凜(つくも・りん)さんへの取材をもとに、おさかなだお長崎のこれまでとこれからについて紹介します。
CEATEC連続出展が生んだ新しい共創のつながり
おさかなだお長崎の活動展開を語る上で欠かせないのが、2024年10月、2025年10月と2年連続で出展したCEATEC(シーテック:Combined Exhibition of Advanced TEChnologies)での取り組みです。
CEATECは「Innovation for ALL(すべての人にイノベーションを)」をテーマに掲げる日本最大級のデジタルイノベーションの総合展です。幕張メッセのほぼ全体を使いながら、2025年は10月14日から17日までの4日間、開催されました。
今回のCEATECへの出展が実現した背景には、興味深い偶然がありました。
岸野さんは事の経緯について、次のように振り返ります。
「CEATECの『海洋デジタル社会パビリオン』コーナーを担当している方が、偶然おさかなだお長崎のメンバーだったことから自分の仕事とも結びつけながら『このパビリオンの中で出展すると、おもしろいはず。何かやりませんか』と声をかけてくださったのです」
ただ、おさかなだお長崎として単独で出展するには、まだ打ち出せるものが少ない。そこで岸野さんたちは、おさかなだおから接点が生まれていた長崎大学やながさきブルーエコノミーというコンソーシアムに声をかけ、共同出展という形を選びました。 これが功を奏し、その後、長崎大学水産学部との接点が生まれることになります。
「2年連続の出展を通し、長崎大学さんと協力して何かを一緒につくる関係ができたというのも、大きな成果でした」と岸野さんは言います。
CEATECは「Innovation for ALL(すべての人にイノベーションを)」をテーマに掲げる日本最大級のデジタルイノベーションの総合展です。幕張メッセのほぼ全体を使いながら、2025年は10月14日から17日までの4日間、開催されました。
今回のCEATECへの出展が実現した背景には、興味深い偶然がありました。
岸野さんは事の経緯について、次のように振り返ります。
「CEATECの『海洋デジタル社会パビリオン』コーナーを担当している方が、偶然おさかなだお長崎のメンバーだったことから自分の仕事とも結びつけながら『このパビリオンの中で出展すると、おもしろいはず。何かやりませんか』と声をかけてくださったのです」
ただ、おさかなだお長崎として単独で出展するには、まだ打ち出せるものが少ない。そこで岸野さんたちは、おさかなだおから接点が生まれていた長崎大学やながさきブルーエコノミーというコンソーシアムに声をかけ、共同出展という形を選びました。 これが功を奏し、その後、長崎大学水産学部との接点が生まれることになります。
「2年連続の出展を通し、長崎大学さんと協力して何かを一緒につくる関係ができたというのも、大きな成果でした」と岸野さんは言います。
「フィッシュヘッドカレー」にデジタル大臣も舌鼓
2025年のCEATECで特に注目を集めたのが、「フィッシュヘッドカレー」でした。
最新テクノロジーが集う会場にキッチンカーが出現しました。
水槽や水中ドローンの実演プールが並ぶ海洋デジタルパビリオン内に、いきなり本格的なキッチンカーのカレー屋台を出店するという〝むちゃくちゃなこと〟ができたと岸野さんは笑います。
このカレーは、長崎の魚のあらを使った未利用魚プロジェクトの一環です。
DAOの中に、長崎のおさかなを活用したい、と考えている料理が得意なメンバーがいて、以前からフィッシュヘッドカレーという企画をやっていました。それがCEATECでも実現したというわけです。
きっかけは、長崎の方から届いた「商品にできない魚の頭は廃棄するのにもお金がかかるんだよね」というひと言。FAO(国際食料農業機関)の報告(2020年)によれば、世界で漁獲された魚のうち30~35%は廃棄されています。フィッシュヘッドカレーは、この課題に向き合う取り組みでもありました。
「シイラ、ブリ、タイなど、いろんな魚の頭をどんどん使っているので、長崎は獲れる魚の種類が日本一多いという強味もアピールできるメニューです。『今日は何味?』というふうに、いろんな魚のカレーをミックスして作っていきますから日によって味も違ってきますけど、どれもスパイスが効いていてとても美味しいんです。今回は鯛のアラを出汁にしたものを会場で販売させていただきました」(岸野さん)
その完成度の高さは、来場した平将明デジタル大臣(当時)も認めるところとなりました。
「大臣がこのブースに立ち寄られた際に試食してくださり、『これは、うまい! DAOのカレーも本格的だね』という、うれしい感想をいただきました」(岸野さん)
最新テクノロジーが集う会場にキッチンカーが出現しました。
水槽や水中ドローンの実演プールが並ぶ海洋デジタルパビリオン内に、いきなり本格的なキッチンカーのカレー屋台を出店するという〝むちゃくちゃなこと〟ができたと岸野さんは笑います。
このカレーは、長崎の魚のあらを使った未利用魚プロジェクトの一環です。
DAOの中に、長崎のおさかなを活用したい、と考えている料理が得意なメンバーがいて、以前からフィッシュヘッドカレーという企画をやっていました。それがCEATECでも実現したというわけです。
きっかけは、長崎の方から届いた「商品にできない魚の頭は廃棄するのにもお金がかかるんだよね」というひと言。FAO(国際食料農業機関)の報告(2020年)によれば、世界で漁獲された魚のうち30~35%は廃棄されています。フィッシュヘッドカレーは、この課題に向き合う取り組みでもありました。
「シイラ、ブリ、タイなど、いろんな魚の頭をどんどん使っているので、長崎は獲れる魚の種類が日本一多いという強味もアピールできるメニューです。『今日は何味?』というふうに、いろんな魚のカレーをミックスして作っていきますから日によって味も違ってきますけど、どれもスパイスが効いていてとても美味しいんです。今回は鯛のアラを出汁にしたものを会場で販売させていただきました」(岸野さん)
その完成度の高さは、来場した平将明デジタル大臣(当時)も認めるところとなりました。
「大臣がこのブースに立ち寄られた際に試食してくださり、『これは、うまい! DAOのカレーも本格的だね』という、うれしい感想をいただきました」(岸野さん)
パビリオン全体を盛り上げる「橋渡し役」
おさかなだお長崎の姿勢を象徴するのが、岸野さんの次の言葉です。
「私たちの最終目的は、おさかなだお長崎のメンバーを増やすことではありません。長崎の漁業が盛り上がるということが重要なんです。メンバーを増やすのは、そのための手段のひとつに過ぎません」
そこで、おさかなだお長崎のメンバーは、海洋デジタル社会パビリオン全体を盛り上げるための施策を展開しました。
そのひとつがスタンプラリー式のクイズラリーです。
海洋デジタル社会パビリオン内の他の出展者にも協力を依頼し、各ブースを回ってクイズに答え、キーワードを集めるとフィッシュヘッドカレーが割引になるというアトラクションを作ったのです。
「CEATEC主催側にも一部協力していただいて実現できました。クイズラリーのなかで、私たちのメンバーが自ら活動を紹介する機会もつくることができました」と岸野さん。勧誘施策には一定の手応えがあったようです。
この取り組みから浮かび上がるのは、おさかなだお長崎が単独で完結するのではなく、周囲を巻き込みながら〝橋渡し役〟として機能するという新しいコミュニティのあり方です。ブース出展の準備や当日の説明員としての活動には、メンバーにトークンという報酬を付与することで、貢献を可視化する仕組みも機能しています。
食体験を通じて、海洋デジタル社会という少し距離のある分野に多くの人を引き込む。これは、まさに地方創生における〝変革の機運を醸成する〟アプローチといえるでしょう。
「私たちの最終目的は、おさかなだお長崎のメンバーを増やすことではありません。長崎の漁業が盛り上がるということが重要なんです。メンバーを増やすのは、そのための手段のひとつに過ぎません」
そこで、おさかなだお長崎のメンバーは、海洋デジタル社会パビリオン全体を盛り上げるための施策を展開しました。
そのひとつがスタンプラリー式のクイズラリーです。
海洋デジタル社会パビリオン内の他の出展者にも協力を依頼し、各ブースを回ってクイズに答え、キーワードを集めるとフィッシュヘッドカレーが割引になるというアトラクションを作ったのです。
「CEATEC主催側にも一部協力していただいて実現できました。クイズラリーのなかで、私たちのメンバーが自ら活動を紹介する機会もつくることができました」と岸野さん。勧誘施策には一定の手応えがあったようです。
この取り組みから浮かび上がるのは、おさかなだお長崎が単独で完結するのではなく、周囲を巻き込みながら〝橋渡し役〟として機能するという新しいコミュニティのあり方です。ブース出展の準備や当日の説明員としての活動には、メンバーにトークンという報酬を付与することで、貢献を可視化する仕組みも機能しています。
食体験を通じて、海洋デジタル社会という少し距離のある分野に多くの人を引き込む。これは、まさに地方創生における〝変革の機運を醸成する〟アプローチといえるでしょう。
VTuber・メタバースが拓く新次元の地方創生
おさかなだお長崎の活動がさらなる広がりを見せたのが、VTuberメンバーによるユニークな企画が立ち上がっている点。
2026年1月23〜25日に開催された「おさかな学園」というメタバース空間でのイベントは新しい形での盛り上がりを見せました。VketCloudというプラットフォームを用いて、コミュニティメンバーがアバターを介した交流を楽しみました。
〝学園〟という通り、講師が時間割ごとに登壇して、さまざまな講義をするのですが、講師の一人で軍艦について発信するVTuberは長崎の軍艦島の歴史について詳細な解説を講義として開催してくれました。
「おさかなだお長崎の活動で、まさかこんな話をVTuberの方から聴けるとは思いませんでした」
「長崎のまちづくりの講義があったり、“放課後“の交流アクティビティ、終わった後も雑談が続く本当に放課後のような体験が出来ました。
メタバースでもこんなに学校生活を追体験できるとは思いませんでした。これがまさに〝何が起こるかわからない〟ということだと思いました」(岸野さん)
2026年1月23〜25日に開催された「おさかな学園」というメタバース空間でのイベントは新しい形での盛り上がりを見せました。VketCloudというプラットフォームを用いて、コミュニティメンバーがアバターを介した交流を楽しみました。
〝学園〟という通り、講師が時間割ごとに登壇して、さまざまな講義をするのですが、講師の一人で軍艦について発信するVTuberは長崎の軍艦島の歴史について詳細な解説を講義として開催してくれました。
「おさかなだお長崎の活動で、まさかこんな話をVTuberの方から聴けるとは思いませんでした」
「長崎のまちづくりの講義があったり、“放課後“の交流アクティビティ、終わった後も雑談が続く本当に放課後のような体験が出来ました。
メタバースでもこんなに学校生活を追体験できるとは思いませんでした。これがまさに〝何が起こるかわからない〟ということだと思いました」(岸野さん)
さらに、メタバースの効果について、岸野さんはこう語ります。
「オンラインコミュニケーションには、ZoomやDiscordもありますが、これらの環境だと、画面を〝眺めている〟感覚になりますが、アバターで行動するかたちだと、向こうの空間に〝入っていく〟気分になります。肌感覚として、ちょっと長崎を感じる度合いが多いように思います」
アバターで動けることで〝自分〟が投影されやすく、「近くの人と3人で集まってお話ししてください」といった行動を促すと、Zoomの会議室よりもリアル感覚に近い交流が可能になります。
「長崎在住の人も参加していますので、『今、そちらの天気はどうですか?』みたいな話が、また、おもしろいんです」(岸野さん)
こうしたメタバース活用から見えてくるのは、バーチャルとリアルの境界を越えるコミュニティ設計の可能性です。特に育児や介護などで物理的な移動が難しい世代にとって、メタバースは〝参加〟のハードルを大きく下げます。
「おもしろいと思った人が参加する」という自立性を保ちながら、多様な人材を巻き込める仕組みがここにあります。
実は、この展開の背景には、おさかなだお長崎のDAOメンバーでもあり、長崎で起業家支援を行う小池勇琉さんの存在がありました。小池さんは元々、長崎の産業を何とかしたいという思いから、ベンチャーキャピタル(VC)を立ち上げたり起業家を育てたりする活動をしていました。そして「長崎を応援してくれる人材がメタバース上で集う」という構想を温めていたといいます。
「小池さんとのつながりから、おさかなだお長崎にVTuberの人たちのグループがたくさん入ってくれました。皆さんメタバースでイベントをやるのが大得意なので、このイベントが実現したんです」(岸野さん)
「オンラインコミュニケーションには、ZoomやDiscordもありますが、これらの環境だと、画面を〝眺めている〟感覚になりますが、アバターで行動するかたちだと、向こうの空間に〝入っていく〟気分になります。肌感覚として、ちょっと長崎を感じる度合いが多いように思います」
アバターで動けることで〝自分〟が投影されやすく、「近くの人と3人で集まってお話ししてください」といった行動を促すと、Zoomの会議室よりもリアル感覚に近い交流が可能になります。
「長崎在住の人も参加していますので、『今、そちらの天気はどうですか?』みたいな話が、また、おもしろいんです」(岸野さん)
こうしたメタバース活用から見えてくるのは、バーチャルとリアルの境界を越えるコミュニティ設計の可能性です。特に育児や介護などで物理的な移動が難しい世代にとって、メタバースは〝参加〟のハードルを大きく下げます。
「おもしろいと思った人が参加する」という自立性を保ちながら、多様な人材を巻き込める仕組みがここにあります。
実は、この展開の背景には、おさかなだお長崎のDAOメンバーでもあり、長崎で起業家支援を行う小池勇琉さんの存在がありました。小池さんは元々、長崎の産業を何とかしたいという思いから、ベンチャーキャピタル(VC)を立ち上げたり起業家を育てたりする活動をしていました。そして「長崎を応援してくれる人材がメタバース上で集う」という構想を温めていたといいます。
「小池さんとのつながりから、おさかなだお長崎にVTuberの人たちのグループがたくさん入ってくれました。皆さんメタバースでイベントをやるのが大得意なので、このイベントが実現したんです」(岸野さん)
コミュニティマネージャーの重要性
このようなコミュニティ主導型活動の展開の中心にいるのが、コミュニティマネージャーの九十九凜さんです。
九十九さんは、ゲームコミュニティや地方創生プロジェクトのコミュニティなどでコミュニティマネージャーを務めてきた経験があり、今回はフリーランスの立場で、おさかなだお長崎にコミュニティマネージャーとして参画することとなりました。
〝仕事感〟を出さずにメンバーが楽しく活動できる場づくりに心を砕いています。
九十九さんは、次のように言います。
「おさかなだお長崎は、1年半ほど経過したタイミングで入らせてもらいました。コミュニティというのは、どうしても熱量が高い人だけで盛り上がってしまいがちなので、熱量が低い人にもコミュケーションや意思決定に参加してもらえるように全体を盛り上げていきたいと思ってマネージメントしています」
コミュニティマネージャーの存在意義について岸野さんは、このように語ります。
「私があれこれ仕切ったり段取りを組んでしまうと、『結局、運営サイドが決めて進めてくれるんですよね』と、メンバーが受け身になってしまいます。コミュニティが盛り上がるには、参加メンバーそれぞれが自発的に、どんどんやりたいことをやり始めるような雰囲気作りが必要なんです」
これを補足して九十九さんは、言います。
「仕事の評価軸で物事を考えると、『貢献できることなんて自分にはない』と引っ込み思案になってしまう人がいます。でもコミュニティは会社ではありません。自分が気に入った発言には〝♡いいね〟とリアクションマークを付けるだけでも、貢献になります。人それぞれ、いろんな貢献ができるんだよ、ということもメンバーの皆さんには伝えていきたいです」
九十九さんは、おさかな学園の意外な展開について、こう語ります。
「私は誰かに何かをやってください、とは頼みません。ただ、コミュニティのどこかで聞こえてくる『これをやりたい』という声が途切れないようにすることにだけは注意を払っています。だれかがアイデアを出したら、しっかり反応して見落とさないようにして、実現に必要な知恵やスキルを持っていそうな方がいたら『力を貸してもらえませんか?』と水を向けたりします。そうすることで、おさかなだお長崎では、自分で発信すれば皆と協力して何かができる。そういうトライができる場なんだよ、ということを体験的に理解してもらい、活動を促進できれば、と思っています」
九十九さんは、ゲームコミュニティや地方創生プロジェクトのコミュニティなどでコミュニティマネージャーを務めてきた経験があり、今回はフリーランスの立場で、おさかなだお長崎にコミュニティマネージャーとして参画することとなりました。
〝仕事感〟を出さずにメンバーが楽しく活動できる場づくりに心を砕いています。
九十九さんは、次のように言います。
「おさかなだお長崎は、1年半ほど経過したタイミングで入らせてもらいました。コミュニティというのは、どうしても熱量が高い人だけで盛り上がってしまいがちなので、熱量が低い人にもコミュケーションや意思決定に参加してもらえるように全体を盛り上げていきたいと思ってマネージメントしています」
コミュニティマネージャーの存在意義について岸野さんは、このように語ります。
「私があれこれ仕切ったり段取りを組んでしまうと、『結局、運営サイドが決めて進めてくれるんですよね』と、メンバーが受け身になってしまいます。コミュニティが盛り上がるには、参加メンバーそれぞれが自発的に、どんどんやりたいことをやり始めるような雰囲気作りが必要なんです」
これを補足して九十九さんは、言います。
「仕事の評価軸で物事を考えると、『貢献できることなんて自分にはない』と引っ込み思案になってしまう人がいます。でもコミュニティは会社ではありません。自分が気に入った発言には〝♡いいね〟とリアクションマークを付けるだけでも、貢献になります。人それぞれ、いろんな貢献ができるんだよ、ということもメンバーの皆さんには伝えていきたいです」
九十九さんは、おさかな学園の意外な展開について、こう語ります。
「私は誰かに何かをやってください、とは頼みません。ただ、コミュニティのどこかで聞こえてくる『これをやりたい』という声が途切れないようにすることにだけは注意を払っています。だれかがアイデアを出したら、しっかり反応して見落とさないようにして、実現に必要な知恵やスキルを持っていそうな方がいたら『力を貸してもらえませんか?』と水を向けたりします。そうすることで、おさかなだお長崎では、自分で発信すれば皆と協力して何かができる。そういうトライができる場なんだよ、ということを体験的に理解してもらい、活動を促進できれば、と思っています」
首都圏や地域コミュニティと繫がり関係人口を増やす
おさかなだお長崎は、首都圏での発信活動にも力を入れてきました。その象徴が、2024年11月2日~3日に開催された「ふるさと渋谷フェスティバル」への出店です。
ここでは、長崎の漁協から直送されたアジを使った大きくてジューシーなアジフライと、フィッシュヘッドカレーを販売。渋谷区不動通商店街との共同出店という形で、オンラインで生まれた縁をリアルな交流へと昇華させました。都市部での食体験を通じて、長崎という地域への関心を喚起するという設計です。
アジフライやフィッシュヘッドカレーは、単なる商品ではなく、地域と人をつなぐメディアとして機能しています。「都市部の人々に長崎の魅力を発信し、関係人口の拡大につなげていく」という狙いは、こうした小さな種をひとつずつ蒔いていくことで、やがて大きな実となるでしょう。
さらに興味深いのが、他の長崎コミュニティとの連携です。まちあすとしては、「長崎友輪家(ユーリンチー)」や「リトルナガサキ」など他のコミュニティと繋ぐことができればそれぞれの活動の幅が広がり、長崎に関心をもつ人たちの裾野も広げていけるだろうと考え、東京での交流会開催を支援したところ、リトルナガサキが龍踊(じゃおどり)を披露するなど、文化を紹介・体験する交流も生まれました。
IT技術者やテクノロジーに関心の高い人も多い「おさかなだお長崎」、メンバーは600余名と多いもののネット発信力に悩む「長崎友輪家」、長崎の大学生や長崎出身の在京大学生など若者が多い「リトルナガサキ」。異なる個性を持つコミュニティ同士が補完し合う関係が築かれつつあります。
ここでは、長崎の漁協から直送されたアジを使った大きくてジューシーなアジフライと、フィッシュヘッドカレーを販売。渋谷区不動通商店街との共同出店という形で、オンラインで生まれた縁をリアルな交流へと昇華させました。都市部での食体験を通じて、長崎という地域への関心を喚起するという設計です。
アジフライやフィッシュヘッドカレーは、単なる商品ではなく、地域と人をつなぐメディアとして機能しています。「都市部の人々に長崎の魅力を発信し、関係人口の拡大につなげていく」という狙いは、こうした小さな種をひとつずつ蒔いていくことで、やがて大きな実となるでしょう。
さらに興味深いのが、他の長崎コミュニティとの連携です。まちあすとしては、「長崎友輪家(ユーリンチー)」や「リトルナガサキ」など他のコミュニティと繋ぐことができればそれぞれの活動の幅が広がり、長崎に関心をもつ人たちの裾野も広げていけるだろうと考え、東京での交流会開催を支援したところ、リトルナガサキが龍踊(じゃおどり)を披露するなど、文化を紹介・体験する交流も生まれました。
IT技術者やテクノロジーに関心の高い人も多い「おさかなだお長崎」、メンバーは600余名と多いもののネット発信力に悩む「長崎友輪家」、長崎の大学生や長崎出身の在京大学生など若者が多い「リトルナガサキ」。異なる個性を持つコミュニティ同士が補完し合う関係が築かれつつあります。
「偶然」を共創の機会に変えられるのがDAOの魅力
おさかなだお長崎の活動を特徴づけるのが、〝偶然〟を活かす柔軟性です。
さまざまなイベントで交流が生まれ、交流からまた新しいイベントが生まれ……という流れについて、「計画してやってるわけじゃないんです」と岸野さんは明かします。
「『CEATECで何を出展するか』みたいな話は計画できますが、その先は未知数です。どこかで知り合った人、CEATECで名刺交換した方がDAOに入ってくれて、新たな活動が突如、出てくるんです。そこがおもしろいんです」
長崎のエリア内でも、当初は繋がりを想定していなかった別のコミュニティとの接点が有機的にどんどん繋がってきたと言います。長崎と東京を結ぶ活動をしている人々と、長崎の現地で活動している人々の間で生まれる、こうした共創の空気を担保しているのが、「なんか、おもしろそうじゃん」くらいで関わることにした人たちが自発的に動く、動けるという原則です。仕事や義務ではないことが、意外な展開を生み出す土壌となっているのです。
国や地方公共団体から助成を受ける地方創生プロジェクトでは、明確な目標設定とKPI管理が求められることになりますが、おさかなだお長崎は、そうした固定的な計画に縛られません。〝友だちの友だちの、そのまた友だち〟が、つながり、IT技術者だけでなく料理研究家やVTuberなど、多様な人材が集まります。そこから生まれる〝人材化学反応〟は、だれにも予測できません。
テキトーそうに見えますが、この〝計画できないことの価値〟こそが、トップダウンでお金を上から落とす地方創生政策では生まれない、新しい成長の方向性を示しているといえるでしょう。偶発性を許容し、活かして広げるコミュニティ設計が、おさかなだお長崎の大きな魅力であり、最大の強みなのです。
さまざまなイベントで交流が生まれ、交流からまた新しいイベントが生まれ……という流れについて、「計画してやってるわけじゃないんです」と岸野さんは明かします。
「『CEATECで何を出展するか』みたいな話は計画できますが、その先は未知数です。どこかで知り合った人、CEATECで名刺交換した方がDAOに入ってくれて、新たな活動が突如、出てくるんです。そこがおもしろいんです」
長崎のエリア内でも、当初は繋がりを想定していなかった別のコミュニティとの接点が有機的にどんどん繋がってきたと言います。長崎と東京を結ぶ活動をしている人々と、長崎の現地で活動している人々の間で生まれる、こうした共創の空気を担保しているのが、「なんか、おもしろそうじゃん」くらいで関わることにした人たちが自発的に動く、動けるという原則です。仕事や義務ではないことが、意外な展開を生み出す土壌となっているのです。
国や地方公共団体から助成を受ける地方創生プロジェクトでは、明確な目標設定とKPI管理が求められることになりますが、おさかなだお長崎は、そうした固定的な計画に縛られません。〝友だちの友だちの、そのまた友だち〟が、つながり、IT技術者だけでなく料理研究家やVTuberなど、多様な人材が集まります。そこから生まれる〝人材化学反応〟は、だれにも予測できません。
テキトーそうに見えますが、この〝計画できないことの価値〟こそが、トップダウンでお金を上から落とす地方創生政策では生まれない、新しい成長の方向性を示しているといえるでしょう。偶発性を許容し、活かして広げるコミュニティ設計が、おさかなだお長崎の大きな魅力であり、最大の強みなのです。
持続可能な地方創生の鍵はコミュニティ育成にあり
ここまで見てきたように、おさかなだお長崎の活動は、オンライン×リアルの融合、VTuber・メタバースの活用、そして偶発的なつながりの創出という、複数の軸で展開されています。
CEATECでのフィッシュヘッドカレーは、未利用魚という課題に向き合いながら、食体験を通じて多くの人を巻き込みました。
VTuberによる軍艦島の解説は、誰も予想していなかった価値を生み出しました。
渋谷フェスティバルでの出店や、他のコミュニティとの連携は、地域の枠を超えた関係人口の拡大に寄与しています。
これらの活動に共通するのは、〝計画して、やっているわけじゃない〟という柔軟性と、〝おもしろいと思った人が勝手に参加する〟という自立性です。
固定的な目標やKPIに縛られず、偶発的なつながりを活かしながら有機的に成長していく。こうしたアプローチは、従来型の地方創生政策とは、一線を画しています。補助金頼みの地方創生は、「金の切れ目が縁の切れ目」、補助金が切れれば終わってしいます。
他方、魅力的なコミュニティを育て、そこに係わることの楽しさを醸成していく活動は、中央からの補助金なんて最初からあてにしていません(お金があるにこしたことはありませんが・・・・・)。
「委託事業ほどのお金を必要とせず、楽しいから持続しているような地方創生ができないか」、まちあすはそのような地方創生を模索しており、おさかなだお長崎は大いに参考になります。(まちあす専務理事の角南国隆さん)
次回の後編では、現地、長崎での地域に根ざした活動や、持続可能性を支える裏側の仕組みについて、さらに深く掘り下げて、ご報告します。
CEATECでのフィッシュヘッドカレーは、未利用魚という課題に向き合いながら、食体験を通じて多くの人を巻き込みました。
VTuberによる軍艦島の解説は、誰も予想していなかった価値を生み出しました。
渋谷フェスティバルでの出店や、他のコミュニティとの連携は、地域の枠を超えた関係人口の拡大に寄与しています。
これらの活動に共通するのは、〝計画して、やっているわけじゃない〟という柔軟性と、〝おもしろいと思った人が勝手に参加する〟という自立性です。
固定的な目標やKPIに縛られず、偶発的なつながりを活かしながら有機的に成長していく。こうしたアプローチは、従来型の地方創生政策とは、一線を画しています。補助金頼みの地方創生は、「金の切れ目が縁の切れ目」、補助金が切れれば終わってしいます。
他方、魅力的なコミュニティを育て、そこに係わることの楽しさを醸成していく活動は、中央からの補助金なんて最初からあてにしていません(お金があるにこしたことはありませんが・・・・・)。
「委託事業ほどのお金を必要とせず、楽しいから持続しているような地方創生ができないか」、まちあすはそのような地方創生を模索しており、おさかなだお長崎は大いに参考になります。(まちあす専務理事の角南国隆さん)
次回の後編では、現地、長崎での地域に根ざした活動や、持続可能性を支える裏側の仕組みについて、さらに深く掘り下げて、ご報告します。