教育プロジェクト(公立校の先生には残業代が出ない!?)

 この20年間、我が国では環境教育の充実が図られてきました。環境を大切にする意識が若者世代にかなり定着している状況を見るにつけ、世の中の諸課題を解決するために「教育」が果たす役割は大きいということがわかります。昨年12月に公表された「地方創生2.0の基本的な考え方」の中では、地方創生1.0との違いとして「児童・生徒や学生が、地方創生の観点から我が町の魅力を再発見し、将来を考え、行動できる能力を重視する教育・人づくりを行う」との新たな方向性が特記されました。

 地方創生のような実践的な学習は「総合探求(旧総合学習)」として実施されると思います。
 しかし、総合探求の時間は教員の準備負担を大きくしているという指摘もあります。生徒・学生に興味を持たせるように授業を展開するための準備は簡単ではありません。ただ、そのような一般論とは別に「小中学校の先生たちは今でも忙しい上に、公立校では残業代が出ないので、新たな取組を指示しにくい」という話も教育委員会から聞こえてきたりします。
 「ブラック企業じゃあるまいし、公立校で残業代が出ないなんて噓でしょ」と思うかもしれませんが、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法) で①残業代を支給しないこと、②給与月額の一定割合(4%)を「教職調整額」として一律に支給することが規定されているのです。

 このルールができた1971年当時の残業時間(月間約8時間)を基準としているのですが、半世紀以上もそのまま堅持されてきました。この背景には、教員の時間外の活動のうち、どこまでが業務(=残業)で、どこからが業務外(自己研鑽)なのかを明確に線引きできないという見解があります。一方で市町村立学校(除、指定市)の教職員給与は都道府県が負担しているため、残業代を支給することにしても市町村に残業を抑制させる効果がないという指摘もあります。したがって、「残業代が出ないなんてあり得ない」と単純に言い切れない側面もあるようなのですが、私立校の教員には残業代が出ていますし、なにより「有能かつ従順な教師に業務がしわ寄せされがち」という事態は好ましくありません。

 働き方改革の流れもあって中央教育審議会でも給特法について審議され、政府は今国会に給特法改正案(教職調整額を4%から10%に段階的に引き上げること等)を提出しています。このコラムの掲載時点では、衆議院で修正の上、参議院に回付されたところです。本改正案が成立しても調整額が増えるだけで残業時間に基づいて支払われるようになるわけではありませんが、公立学校教員の待遇・労働環境の改善に期待します。
 特に、地方創生の教育プロジェクトに、熱意をもって協力して下さっている教員の方々への感謝の気持ちを忘れてはならないと思うのです。
                                              (くまさん)