2025.6.20
コラム
教育プロジェクト(公立校の先生には残業代が出ない!?) ②
前回コラム(5/20)の後、給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の改正案が6月11日に成立しました。残業時間に基づいた残業代ではありませんが、過去半世紀以上にわたり固定されていた「教職調整額」が給与月額の10%まで段階的に引き上げられるのですから前進ではあります。
本テーマについては教育関係者からもご指摘、感想をいただきました。
「そもそも残業と認識されていない」という課題。法令上、公立学校教員に残業を命じることができるケースは、政令で4つ(校外実習、修学旅行、職員会議、災害・緊急の生徒指導)に限定されています。これら以外は「残業命令が出されているはずがない」ので「教員が自主的に残っているだけ」と解釈され、こういう理屈の下では、いわゆる残業代不払い問題は(心情的にはともかく)法律的には存在していないことになります。現実には教師の業務は多岐にわたっているのに、いったん自主的な居残りと整理してしまうと、通常の勤怠管理ができなくなります。
例えば課外クラブ活動の部の顧問。本人が好きな分野であれば、自主的といえるかもしれません。それでも放課後や休日の休息・余暇時間が削られますし、そもそも好きでもない分野の顧問を担当している教師もいるでしょう。部の顧問は法令上の義務ではなく、かつ、上記の4類型にあてはまらない=残業ではない。学生時代のクラブ活動は楽しかった思い出がありますが、こういった事情を考慮すれば、専任の指導者を配置する特殊ケースを除き、学校から地域への移行もやむをえないところです。
また、生徒が補導された時。警察署までクラス担任が出向くのはTV学園ドラマでも放映され、当然のように思われています。保護者が適切に対応しないからといって、なぜ教師に任せているのか。
保護者の問題といえば、「何より辛いのはモンスターペアレンツ」という声も切実です。これについては、国会審議の段階で「不当な要求等を行う保護者等への対応について支援を行うこと」が法案(改正法附則)に追加されました。不当要求への対応は弁護士に任せ、給食費不払いへの対応は徴税部局に任せる方がよいという指摘も尤もです。
公共セクターは住民トラブルを担当者任せにしがちですし、法案成立後に政府が作成した概要1枚紙に記載されていないので、モンスターペアレンツ対策に本気で取り組む気があるのか少々気にはなります。ただ、公立学校での働き方改革において、「時間外在校等時間」(=自主的?な居残り時間) の削減と併せ、キモになるのは最後の問題の解消であるように感じた次第です。
(くまさん)
本テーマについては教育関係者からもご指摘、感想をいただきました。
「そもそも残業と認識されていない」という課題。法令上、公立学校教員に残業を命じることができるケースは、政令で4つ(校外実習、修学旅行、職員会議、災害・緊急の生徒指導)に限定されています。これら以外は「残業命令が出されているはずがない」ので「教員が自主的に残っているだけ」と解釈され、こういう理屈の下では、いわゆる残業代不払い問題は(心情的にはともかく)法律的には存在していないことになります。現実には教師の業務は多岐にわたっているのに、いったん自主的な居残りと整理してしまうと、通常の勤怠管理ができなくなります。
例えば課外クラブ活動の部の顧問。本人が好きな分野であれば、自主的といえるかもしれません。それでも放課後や休日の休息・余暇時間が削られますし、そもそも好きでもない分野の顧問を担当している教師もいるでしょう。部の顧問は法令上の義務ではなく、かつ、上記の4類型にあてはまらない=残業ではない。学生時代のクラブ活動は楽しかった思い出がありますが、こういった事情を考慮すれば、専任の指導者を配置する特殊ケースを除き、学校から地域への移行もやむをえないところです。
また、生徒が補導された時。警察署までクラス担任が出向くのはTV学園ドラマでも放映され、当然のように思われています。保護者が適切に対応しないからといって、なぜ教師に任せているのか。
保護者の問題といえば、「何より辛いのはモンスターペアレンツ」という声も切実です。これについては、国会審議の段階で「不当な要求等を行う保護者等への対応について支援を行うこと」が法案(改正法附則)に追加されました。不当要求への対応は弁護士に任せ、給食費不払いへの対応は徴税部局に任せる方がよいという指摘も尤もです。
公共セクターは住民トラブルを担当者任せにしがちですし、法案成立後に政府が作成した概要1枚紙に記載されていないので、モンスターペアレンツ対策に本気で取り組む気があるのか少々気にはなります。ただ、公立学校での働き方改革において、「時間外在校等時間」(=自主的?な居残り時間) の削減と併せ、キモになるのは最後の問題の解消であるように感じた次第です。
(くまさん)