地方創生と海藻ビジネス① (ブルーカーボンクレジット)

 今月初旬、海藻活用によるブルーエコノミーの実現について考えるシンポジウムに参加しました。インバウンドの寿司人気で盛り上がるサーモン(養殖)、マグロ、ホタテ、ウニに比べれば少々地味かもしれませんが、大学・自治体関係者、食品・化粧品からIT分野の企業、地方創生活動家、さらにはブルーカーボン関係者まで集まりかなりの盛況でした。

 大気中のCO2を森林が吸収・貯留する働き(グリーンカーボン)については中学校で習うようになり今では広く知られています。最近、「海洋生物」によるCO2吸収・貯留(ブルーカーボン)への関心が高まりつつあります。
 筆者は海洋生物と聞くと「魚、イカ・タコ、エビ・カニ」などの刺身・寿司ネタやクジラ・イルカ、アザラシを思い浮かべるのですが、ブルーカーボンの世界では海草やマングローブなどの「植物」を指します。
 グリーンカーボンの場合、山火事や災害による森林消滅や、不適切な開発・伐採によって数十年もたたずに樹木中の炭素がCO2に戻ってしまう可能性があるのに比べて、ブルーカーボンでは、酸素が少なく有機物が分解されにくい海底や土壌中に数百年から数千年も貯留されると考えられています。

 そこに目を付けて、ブルーカーボンにもクレジット制度ができました。国際的にはマングローブ林や浅瀬に根を張る海草の保全・拡大がプロジェクトの主流ですが、日本では「磯焼け対策(=海藻(藻類)による藻場造成)」という漁業振興・観光振興ともつながった独特の展開があり、日本独自の「Jブルークレジット」の対象になっています。クレジットとして認証されるためには「追加性」(=その自主的な活動に持続性・発展性があるか)及び「ベースライン」(=自主的活動の結果としてCO2吸収量が増加したことが明確に示せるか)という要件を満たしているかどうか審査されます。
クレジット購入者はカーボン・オフセットにより排出量削減を達成するほか、温暖化対策活動実績として企業PRすることもできますし、クレジットの申請者はクレジット売却によって得た収入を漁業振興資金に充てることができます。
 漁業をなりわいとしている地域においては、ブルーカーボンクレジット制度の利用は、資金の獲得手段にとどまらず、地域が置かれている現状と課題を認識し、どのような活動をすれば良いかを考える機会ともなることが期待されます。

                                                (くまさん)