2025.7.15
コラム
制度の障壁があるなら「特区制度」で突破できないか
6月13日に閣議決定された「地方創生 2.0 基本構想」では、国の役割として「地方起点の大胆な規制・制度改革」を掲げ、「まずは、特区制度の運用を抜本的に強化する」としています。
現在、特区制度には①構造改革特区(2002年創設)、②総合特区(2011年創設)、③国家戦略特区(2013年創設)の3つがあります。総合特区と国家戦略特区は、国・地方の協議会や諮問会議での議論の上で区域を指定して実施するもので、本年5月時点の特区指定数は前者23、後者16。他方、構造改革特区は全ての自治体が活用可能で、特区認定の累計実績は1,432件もあります。
先月、宮城県のある町を訪問しました。典型的な農業のまちで、町内には宿泊施設がほとんどありませんでしたが、ある企業が空き家を再生して宿泊の受け皿にする取組をしていました。いわゆる旅館とは違って、ワーケーションや他会員との交流を楽しむ会員制スタイル。食事は共同キッチンに用意されている食材を自由に使って会員が自炊する方式にして運営コストを抑えるとともに、会員はそれを楽しむというもの。陶芸やガラス工房を併設しているほか、運営者は「この町には良い米と水が揃っているのに酒蔵がない。それなら自分で『どぶろく』を作ろうかと思っている」。
ということは「どぶろく特区」の出番?構造改革特区の中でも「どぶろく特区」は人気が高く、全国43道府県、210件の実績があります。
通常、濁り酒(どぶろく)の製造免許を取得するには、少なくとも年間6,000リットル製造しなければなりませんが、農家民宿や農園レストランではこれほど大量に必要としていません。そこで、「どぶろく特区」では農家民宿等を営む農業者が自ら生産した米を原料としている場合に、この最低製造数量基準を適用しない(=少ない製造量でもOK)とされています。ちなみに上記の企業は、空き家とセットになった農地で営農することを条件に空き家を取得しているそうなので「自ら生産した米を原料にする」という要件を満たすことができそうに思います。
また、「ワイン特区」なら、地域の特産物を原料にしていれば(農業者に限らず)「誰が製造者でも」最低製造数量基準を年間6,000リットルから2,000リットルまで引き下げられるので、新たな観光資源として各地でワイナリーが生まれています。
今般、「特区制度の運用を抜本的に強化する」ため、特区制度を活用した取組には、国の交付金(新しい地方経済・生活環境創生交付金)の採択で優先することとされました。
酒造に限らず、やりたいことがあっても制度的にできないなら特区制度が使えないか、まずは地域のプレーヤーと自治体で検討し、たとえそこで結論が出なくても、内閣府地方創生推進事務局の特区担当に相談するのが良いと思います。突破口が見つかるかもしれません。
(くまさん)
現在、特区制度には①構造改革特区(2002年創設)、②総合特区(2011年創設)、③国家戦略特区(2013年創設)の3つがあります。総合特区と国家戦略特区は、国・地方の協議会や諮問会議での議論の上で区域を指定して実施するもので、本年5月時点の特区指定数は前者23、後者16。他方、構造改革特区は全ての自治体が活用可能で、特区認定の累計実績は1,432件もあります。
先月、宮城県のある町を訪問しました。典型的な農業のまちで、町内には宿泊施設がほとんどありませんでしたが、ある企業が空き家を再生して宿泊の受け皿にする取組をしていました。いわゆる旅館とは違って、ワーケーションや他会員との交流を楽しむ会員制スタイル。食事は共同キッチンに用意されている食材を自由に使って会員が自炊する方式にして運営コストを抑えるとともに、会員はそれを楽しむというもの。陶芸やガラス工房を併設しているほか、運営者は「この町には良い米と水が揃っているのに酒蔵がない。それなら自分で『どぶろく』を作ろうかと思っている」。
ということは「どぶろく特区」の出番?構造改革特区の中でも「どぶろく特区」は人気が高く、全国43道府県、210件の実績があります。
通常、濁り酒(どぶろく)の製造免許を取得するには、少なくとも年間6,000リットル製造しなければなりませんが、農家民宿や農園レストランではこれほど大量に必要としていません。そこで、「どぶろく特区」では農家民宿等を営む農業者が自ら生産した米を原料としている場合に、この最低製造数量基準を適用しない(=少ない製造量でもOK)とされています。ちなみに上記の企業は、空き家とセットになった農地で営農することを条件に空き家を取得しているそうなので「自ら生産した米を原料にする」という要件を満たすことができそうに思います。
また、「ワイン特区」なら、地域の特産物を原料にしていれば(農業者に限らず)「誰が製造者でも」最低製造数量基準を年間6,000リットルから2,000リットルまで引き下げられるので、新たな観光資源として各地でワイナリーが生まれています。
今般、「特区制度の運用を抜本的に強化する」ため、特区制度を活用した取組には、国の交付金(新しい地方経済・生活環境創生交付金)の採択で優先することとされました。
酒造に限らず、やりたいことがあっても制度的にできないなら特区制度が使えないか、まずは地域のプレーヤーと自治体で検討し、たとえそこで結論が出なくても、内閣府地方創生推進事務局の特区担当に相談するのが良いと思います。突破口が見つかるかもしれません。
(くまさん)