DXは地方創生にどのように活用できるのか ③(地方創生DAO: 面白そうだから人が集まる)

 筆者は、長崎の水産業振興を目的としたLocal DAOプロジェクト「おさかなだお長崎」に参加しています。
この取組のユニークな点は、定型的な活動だけでなく、自由な取組についてもNFTトークンが報酬として支払われることです。メンバー各自が「やりたいこと」を自由に提案し、DAOメンバーの投票で可決されればプロジェクトとなります。受け取ったトークンは提携店でヒレ酒や刺身盛合せなどのリワードと交換できます(提携店のご厚意)。換金性はありませんが、ちょっとしたゲーム性を楽しめます。

 DAOには漁業関係者、飲食店経営者、料理研究家、IT業界関係者、SNSインフルエンサー、大学教員や学生、自治体職員、地方創生に携わりDXに関心のある人など様々な分野の人が東京・長崎を中心に全国各地から集まっています。
各自が「やりたいこと」をやるとなると当然ながら取組内容も様々で、長崎の魚を使った料理教室の開催、イベントで長崎産アジのフライを出店、長崎漁業の魚種日本一をNFTアートでPR、大学生がDAOのブロックチェーン分析を学会で発表、長崎と東京のICT遠隔共同学習、これら取組のSNS発信・・・・・
 
 体系的計画的な取組と違って、遊んでいるように見えるかもしれません(逆に運営サイドは大変ですが)。しかし、この「参加者が楽しい」は地域活性化のポイントではないか? というのは、地域活性化でよく言われるのが「人材不足」です。うまくいった地域の事例を見ても「あんな人材をどうすれば連れてくることができる?」と思い悩む。

 以前のコラム(2024.7.29)で触れた長岡市の旧山古志村地域では、特産の錦鯉をモチーフにしたNFTを販売したところ、購入者の一部が山古志ファンとなり、現地を訪れたり、地域活性化活動に継続参加してくれたりしているそうです。つまり地方創生DAOの設立趣旨に賛同して集まったメンバーはその地域のファン予備軍なのです。面白そうだから人が集まってくる。ある地域を地域外から応援してくれるファンコミュニティを形成し、各メンバーの人脈も活用できるという意味で、今後、地方創生の有力な手段になる可能性を秘めていると思います。

 「おさかなだお長崎」は、今年8月、長崎市より「長崎創生プロジェクト事業」に認定されました。
また、静岡県三島市・熱海市・函南町の3市町も「伊豆ファン倶楽部事業」(内閣府デジタル田園都市国家構想交付金(TYPE3))の一環としてNFTトークン発行を追加しました。
 
 さらに「おさかなだお長崎」のメンバーの一人が、「寿司といえば富山DAO」をこの10月にスタートさせました。DX(Web3.0)の中でも理解の得られにくいDAO(分散型自律組織)ですが、富山県が公式に立ち上げるのです。地方創生DAOに期待したいと思います。

                                                 (くまさん)