再エネルギー事業と地域の共生④

2-5.よそ者への警戒感

ただし、私たちは地域にとってはよそ者です。
地元の人や地元出身の人が起業したら応援してくれるとしても、よそ者だと、それが非常に難しい。
過疎地域で人材が少ないので、外から人を引っ張ってきたり、Iターンで事業をやったり、大企業の一部が事業参画する場合も、いざ立ち上げるとなると「別にそんなこと望んでないよ」となりがちです。
最初は「地域活性化だ」「地域貢献だ」「共生だ」などと言っていても、そうなってしまうのは、経験上よくあることです。

私たちも、この点には非常に注意しています。
何でも〝ありがた迷惑〟になってしまうかも知れない、と思って着手するのと、そう思わないのとでは、何かと違ってくるものです。

地域にはそれぞれの歴史、文化、生活習慣などがあり、たとえば「三代前の曾祖父の代にけんかしたあの家とは話さない」みたいなことはザラ。
いろんなしがらみを背負って暮らしている。
それをないものにしようとか、「今はこういう時代だから」と、新しいことを強引にやろうとしたら、反発を食らうだけです。
地域の人を抵抗勢力のように思ってしまうと、先方も先方で、こちらを抵抗勢力だと見なします。
そこを自覚して地域に入ることが、非常に大事じゃないかなと私は思います。
私の経営している、もうひとつの会社『たまエンパワー』は多摩市にあり、相模原市から、そんなに離れていませんが、太陽光発電会社です。
会員制観光農園である『さがみこファーム』は、地域に根ざした事業にしたいと思い、別法人として相模原市緑区に設立しました。

農業と発電事業の両方を、別の会社としてやることは、結果的に良かったです。
発電事業者として地域に入ると、地元の人から警戒されて、何だか近寄りにくい存在に思われがち。「東京からよく分からない会社が、金もうけに来た」みたいな印象で見られてしまいます。
しかし農業だと、わりと親近感が持てて、仲間として受け入れてもらいやすい。当然努力は必要ですし、農業がその地域の基幹産業ならではの話ですが。

2023年、弊社はFIT制度に頼らない新たな発電所を始めました。
事業の構図はこちらです。
生活協同組合の『生活クラブ』と連携してPPAを、ふたつ進めています。
工夫した点は「ファンづくり」です。小口の寄付を募って発電所を作るというのは、生協特有のやり方かもしれません。

どういうことをしたかと言うと「再エネはいいと思うけれど、自分はマンション住まい。自宅には設置できない」といった人は、潜在的にいます。
そこで「こういう発電所なら応援したいと思ってくれたら、1000円一口の寄付をお願いします。発電所の名前をつける権利として建設資金に組み入れます」と告知したところ、2か月で1100人も寄付してくれたのです。これには、びっくりしました。

「小口」なので大きな額にはならないですが、ファンが1000人増えたと解釈すると、けっこうなパワーです。
増えた「コアファン」に新たな仕掛けができる。これを大きな計画に結び付けたいのです。発電所作りの共感者をどのように外から巻き込むかは非常に大事なことです。これは、意識しながら進めています。

ところで弊社は2023年に資源エネルギー庁から『地域共生型再生可能エネルギー事業顕彰(=地域共生再エネ顕彰)』をいただきました。
「地域共生」についての弊社の考えや取り組みをまとめると下記の通りです。地域防災、地域雇用、教育連携、景観の自主規制、環境再生型の取り組み、生物多様性保全などが入ります。
再エネが求められている今、弊社のような発電事業者を選んで調達する企業に対して、他社の発電所との違いが分かるよう、たとえばラベル付けや買い取価格の違いの明示など、優良発電所が広がる仕組みが必要になります。
悪い発電所のニュースに引っ張られて「再エネはけしからん!」とならないよう、適正評価を社会に示すことは必要だと思います。

3.成功するためのポイント

まとめに入ります。ポイントは7つです。

1番目は「継続する事業を作る」。
どんなに社会貢献を掲げても、ボランティアだけでは続けていけない。

2番目は「地域の特徴を最大限に生かす」。
当然、地域ごとに、その場所の特徴は異なります。
「横展開」とか簡単に言えないと思います。特に農業はそうですね。
太陽光があってパネルが一緒でも、その生かし方は地域ごとに違う。
ほかの地域でやっていることを、真似しようとしてもうまくいかないです。

3番目は「事業者の強みとの掛け合わせ」。
相模原市は自然が豊かでキャンプ場が多く、都市に近接しているのが地域の特徴です。
掛け合わせる弊社は太陽光エネルギー開発をやっていたし、体験農業や教育に必要な生産管理のできるスタッフもいました。
「弊社のビジネスと相性が良さそうだな、農作物はブルーベリーかな……」と、生かせる方法を考え、今日に至っています。

4番目は「地域・自然に寄り添い、保全・活用していく」。
文字にするときれいに見えますが、実際は、中山間地の農業は野生鳥獣との戦いです。農作物を守らないと食われてしまうので、きれいごとでは済まされないシビアさがあります。それをひっくるめてどう付き合っていくかが求められます。

5番目は「人を呼び込む仕掛け」。
弊社は、観光との掛け合わせで会員制を取り入れ、法人の引き入れ、学校との連携も図りました。ほかにもいろいろな切り口があると思います。

6番目は「行政と民間の協働」。
これは必須。行政には行政、民間には民間にしかできないことがあります。役割分担をしてタッグを組んでやっていく。ここで間違えるとうまくいかないです。

そして最後、7番目は「人任せにしない」。
自分で考えないとダメです。
考えたうえで足りないものを外部から補うことが必要と思います。
たとえば地域商社のような方法もあるでしょう。
余った電気を地域外に売って地域収入にすることもできるでしょうし、地域の雇用創出も可能でしょう。
首都圏の自治体との連携などにつながる方法もあるかと思います。

人口の減少は悩ましい問題です。
人口の減少を食い止めるには、地域の高校の存続がポイントになるのは間違いないと思います。学校をどのように魅力化するか、高校のテコ入れで若者が地域に残るようになった事例も各地にあります。