これが「デジタル田園都市国家構想」 その③

3-1-4.デジタルの力で「魅力的な地域をつくる」

地方の社会課題解決の最後に、デジタルを活用した魅力的な地域づくりについてご説明します。
この項目には非常に多岐にわたる施策が盛り込まれているので、代表的なものを三つご紹介します。

一つ目は「教育DX」。
文部科学省が、全国の小中学校で、生徒一人に1台 パソコン端末を用意する「GIGA(ギガ)スクール構想」を進めています。デジタル教科書や教材の充実、中山間地域や離島での遠隔教育の推進などの施策が盛り込まれています。
なお、高校教育でも、全国の高校の21%に当たる1010校を「DXハイスクール」に指定する方針だと、先日の日経新聞(2023年10月27日付)に出ていました。

二つ目は「医療・介護分野でのDX」。
オンラインによる遠隔診療や服薬の指導、全国ネットの電子カルテシステムの整備などです。

三つ目は「地域交通分野でのDX」。
地方では、人口減少による鉄道の廃線やバスの減便などが大きな問題になっており、たとえば、過疎地など地域限定型の「自動運転サービス」の実証実験も行われています。官民の共創、交通事業者間の共創、他分野を含めた共創、3つの共創により、地域交通の「リ・デザイン=再構築」が進んでいます。
なお、現在、ライドシェア、自家用車の有償での運送利用をどこまで進めるのか、議論になっているのはご承知のとおりです(2024年4月から限定的に解禁)。

この他に、魅力的な地域をつくる、という分野では、ドローンや配送ロボットなどによる物流改革、インフラ分野やまちづくり分野でのDX、文化・スポーツ活動を通じたまちづくり、防災・減災のデジタル施策などが盛り込まれています。

3-2-1.デジタルインフラの整備

以上のような、デジタルの力を活用した地域課題解決を進めるためには、それを支える基礎条件整備が必要です。この条件整備は、地方それぞれというより、国が主体となって行う施策になります。
まず、デジタルの基盤となる、デジタルインフラの整備です。
地域でデジタル活用を進めていくためには、デジタルインフラが全国に整備されていなければなりません。国が主体となり、5Gを全国の99%、光ファイバーを99.9%まで整備します。

複数分野でデータを共有・活用するためのデータ連携基盤も整備中です。
従来、自治体ごと、その中でも部門ごとにシステムが違って、連携できないことが往々にしてありました。
それを解消しようと、デジタル庁主導で統一システムを作り提供する、あるいは仕様を標準化する方向で進めています。

3-2-2.デジタル人材の育成・確保

次にデジタル人材の育成・確保です。現在、日本には高度なデジタルスキルを有する技術者が約100万人いると言われていますが、質・量ともに不足しており、都市部への偏在も指摘されています。これをさらに230万人育成し、累計330万人まで増やすのが目標です。

そのための施策として、まず、産業界で求められるデジタルスキル標準を提示し、研修や国家試験を通して人材育成を進めるプラットフォームを構築します。さらに、職業訓練におけるデジタル分野の重点化、大学などの高等教育機関における教育プログラムの認定など、デジタル人材の育成を計画的に進め、これらの取組を、国で進捗管理します。

また、育成したデジタル人材に、都市部だけでなく、地域の中小企業や地方自治体などで活躍していただくための促進策も盛り込まれています。

3-2-3.誰一人取り残されないための取り組み

一方で、国による条件整備としては、〝誰一人取り残されない〟ための取り組みも重要です。
たとえば、高齢者、障害のある方、デジタル機器やサービスに不慣れな方などにも、デジタルの恩恵が行き渡るよう、国から委嘱されたデジタル推進委員が、全国各地の公民館や携帯ショップなどで、きめ細かなサポートを行う体制を整備します。今は全国約2万人ですが、将来は5万人体制を目指しています。

3-3.モデル的な地域ビジョンの例

以上のような施策体系の下で、各地方においては、自ら地域の特性に応じ、地域の将来ビジョンを描き、それに向けた取り組みを進めることが求められます。
デジタル田園都市国家構想総合戦略では、その参考になるよう、国としてモデル的な地域ビジョンを提示し、各省庁が連携して支援する枠組みを、いくつか示しておりますので、ご紹介します。

■スマートシティ
デジタル技術を使った地域づくり、まちづくりの先進的な取り組みを進めようと、関係省庁が合同審査会などの枠組みで支援しています。
現在全国51地域のプロジェクトが選定されていますが、2025年までに100地域の創出を目指しています。

■スーパーシティ
スマートシティよりさらに先進的な取り組みです。大胆な規制改革や複数の先端サービスの実現に向けて、大阪府・市、つくば市が「スーパーシティ」に指定されています。加賀市、茅野市、吉備中央町の3市町連携による「デジタル田園健康特区」も指定されました。

■デジ活 中山間地域
中山間地域では、農林水産業の仕事づくりを軸に、デジタル技術を活用した地域活性化を推進しており、これを関係省庁連携で支援しています。
2023年春から登録スタート。27年度までに150地域の指定を目指しています。(24年1月現在、33道府県55地域が登録済み)

■大学を核とした産学官協創都市
地方大学を拠点に地域活性化を目指すモデルです。「地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージ」という枠組みに基づき、関係省庁が支援しています。

■SDGs未来都市
自治体単位でのSDGsへの取り組みを支援するモデルで、自治体どうしの広域連携の取り組みも支援しています。すでに150超の都市が指定され、2024年までに210都市に広げようと進めています。


■脱炭素先行地域
地方創生と脱炭素を同時に実現するモデルです。
民生部門の消費電力需要を、再エネによる電力供給と省エネによる削減分で賄う地域ということで、様々な分野の施策との連携や地域間の連携が期待されています。2025年までに100か所を選定し30年までに実現させるのが目標です。
(2024年3月現在、36道府県94市町村が選定済み)

以上が、デジタル田園都市国家構想に基づく地方支援策の全体像です。