やりたい施策があっても、なかなかやれない事情②「人手不足」

 前回の「厳しい財政状況」については、国や都道府県の補助金、ふるさと納税の獲得など知恵を絞ってクリアするとしても、小規模な自治体で必ずといっていいほどネックになるのが「人手不足」です。当社団も、具体の地域で支援策を検討する中で、人手不足が地方創生のネックとなっている状況を見てきました。

 民間企業であれば、自社リソースの制約条件(資金調達力や人員など)を勘案して、注力すべき事業分野を取捨選択するのが当たり前でしょう。しかし、地方自治体では、法律で義務付けられた「やめられない業務」がやたら多いのです。
 赤ちゃん出生数が減ったからといって、子育て関連業務を廃止することなどできず、逆に子育て支援強化が求められます。防災・事故再発防止策が積み重なり、近年では感染症対策、個人情報保護や情報セキュリティ対策、マイナンバーカード交付などなど。

 高度成長期と異なり、税収増が見込みにくい以上、職員数は抑制せざるをえません。そのため、人口が数千人、職員総数(教育・消防を除いた一般行政部門)が100名程度の役場では、多くの義務的業務をこなすため、職員一人一人があれこれ兼務(=マルチタスク化)しています。ここに「働き方改革」が加われば、(DXで事務合理化の余地はあるとしても)「新しい施策をやりたくてもなかなかやれないよ」という嘆きもお分かりいただけるのではないでしょうか。

 政府もこの問題を認識しており、内閣府は2015年度より「市町村長の補佐役」となりうる専門人材の派遣を支援しています(地方創生人材支援制度)。2020年度からDX人材、2022年度からグリーン人材と専門家の分野も次々に追加拡大されています。
自治体にとっては総務省の「地域おこし協力隊」(2009年度創設)の方が馴染み深いかと思います。都市から過疎地への移住を狙った制度ですので、役場の人材不足に関する直接の対策ではありませんが、地域に入って活躍してくれる人材は地域活性化において重要な存在です。2021年度には協力隊の専門人材版ともいうべき「地域プロジェクトマネージャー」制度が追加されました。

 定員管理の下で新規施策を打ち出すには、こういった人材支援制度を活用することは自治体にとって有効ですが、うまく活用するためには、派遣人材と自治体・地元住民との思惑にズレがないようにしたり、受入れ住宅の準備をしたりといったノウハウがあります。それについては、コラムとは別の場でお話したいと思います。